技術分野 | ロボット技術 |
技術キーワード | 生産性向上,データ活用,高品質化,自動化,高効率化,効率化,i3-Mechatronics,ロボット |
2024年5月8日
製造自動化や労働力不足の解消への要求や新興国の工業化進展などから、国内外でアークw88 winロボットの市場は拡大しています。また、製品品質向上、生産コスト削減、安全な作業環境の提供といった観点からも、アークw88 win現場でのロボット化の需要は高まっています。特に自動車産業では、シートフレーム、排気系部品、足回り部品等の接合には作業効率が高いアークw88 winが用いられています。
当社のアークw88 winロボットは、多様な機能とコンポーネントに加え、豊富なノウハウを生かしたロボット技術で、様々なお客さまのご要望にお応えします。例えば、バリエーションの豊富なロボットに極低スパッタw88 winEAGL工法を装備した“アークw88 winパッケージ”を提供し、最適なロボットでスパッタを極限まで低減した高品質なw88 winを実現しています。
さらに、これまでの自動化ソリューションにデジタルデータのマネージメントを加えた新たなソリューションコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を推進し、データを活用してw88 win現場の設備保全の効率化や品質向上をサポートしています。
本レポートでは、新w88 win波形制御と新型サーボトーチを用いて、さらに高速・高品質を実現した最新のアークw88 winソリューション事例を紹介します。2024国際ウエルディングショーでの鉄w88 win、2023国際ロボット展での薄板のアルミニウムw88 win(以下アルミw88 winと略す)の実演では、スパッタ発生を極限まで抑制し、非常に高い品質のw88 winを実現するとともに、スパッタ対策コストの削減を実現しています。
w88 win作業では、高品質な接合を短時間で実現する方法の確立が重要な課題となっています。
一般的なアークw88 winでは、ロボットの手先に取り付けられたトーチから送りだされるワイヤと母材(ワーク)に電流を流し、接合部を溶融させることでw88 winを行います。ワイヤは一定速度で送りだされて、ワークに接触し短絡した瞬間に大きな短絡電流が流れ、ワイヤを溶断します。一定速度でワイヤが送りだされているため、この短絡を繰り返すことで、w88 winを行います。
しかし、このワイヤがワークに接触する短絡時に、溶融金属の粒(スパッタ)が飛散することが大きな問題になっています。スパッタがワークに付着すると、そのスパッタを除去する工程が必要になり、生産効率が低下します。さらに、スパッタがワークを固定するジグに付着した場合、ワークの位置がずれたり、固定できなくなったりするため、定期的なスパッタ除去・清掃などの作業が発生します。これらの問題は、製造コストの増加や生産効率低下に直結し、製品の品質にも悪影響を与える可能性があり、その解決が課題となっています。
当社では、上述の問題を解決させるため、2013年12月に新しい工法である「EAGL工法(Enhanced Arc weldinG for Low spatter)」を製品化しました。この工法では、トーチ先端に取り付けられたワイヤ送り装置が、ワイヤとワークの接触を感知した瞬間に、ワイヤの戻し処理を行います。図1に従来の短絡w88 win法とEAGL工法の原理を示します。EAGL工法はw88 win時にワイヤを正逆方向に繰り返し送給制御することにより、スパッタの大幅な低減が実現できました。
図1 EAGL工法の原理
この度、従来EAGL工法をさらに進化させた「新型EAGL工法」を製品化しました。新型EAGL工法の最大の特長は、業界最高のモーション性能を誇る当社製サーボモータ「∑-X(シグマテン)シリーズ」によるワイヤ送給と、これに最適化した新w88 win波形制御による極低スパッタw88 winです。また、難易度の高いアルミニウム材(以下アルミ材と略す)w88 winの改良やw88 win裕度(ワークのばらつきがある程度あっても、高品質なw88 winができる範囲)の向上により、EAGL工法の適用範囲を拡大させています。従来のサーボトーチと比較してw88 win時の電圧・電流・ワイヤの送りを更に高速・高精度で制御することが可能となり、高品質・高生産性を実現する低スパッタアークw88 winを実現しました。
1)鉄w88 win
鉄のアークw88 winは、自動車産業、建築、橋梁、造船、パイプラインの設置や修理など、様々な分野で活用されています。特に自動車産業では、フレームやボディーパーツの製造において、アークw88 winは重要な役割を果たしています。耐久性と安全性が重視される部分の製造には欠かせません。
アークw88 winの中でスパッタが発生しやすいCO2w88 winにおいても、新型EAGL工法であれば、図2で示す工法別のスパッタ発生量比較から、従来の短絡w88 win法に比べて最大99%のスパッタ低減が可能となります。
さらにMAGw88 winでは、新型EAGL工法の採用により、図3のビード形状比較に示すように、従来EAGL工法に比べて、ビード幅や溶け込み量の向上が可能となります(比較条件:w88 win継手は重ね、板厚は2.0mm、w88 win条件は電流200A、速度70cm/min)。ビード幅が広がることでワークのずれやワークの隙間に対するw88 win裕度が向上し、高品質なアークw88 winを実現します。
図2 スパッタ発生量比較
図3 ビード形状比較
2)アルミw88 win
アルミ材のアークw88 winは、特にその軽量性と耐食性が求められる分野で広く利用されています。自動車産業では、近年、燃費効率の向上とCO2排出量の削減を目指して、自動車の軽量化が進められており、アルミ材はその軽量性から、自動車のボディーパーツやフレームなどに広く採用されているため、アルミ材のw88 winの重要性は一段と増しています。
新型EAGL工法では、新型サーボトーチと新w88 win波形制御により、板厚1.5mmの薄板アルミ材の高速w88 winを実現しました(w88 win条件:電流120A 速度200cm/min)。このように、難易度の高い薄板のアルミw88 winであっても、w88 win制御速度を向上した新型EAGL工法であれば高速・安定かつビードヨレのない高品質なw88 winが可能です。
さらに、アルミw88 winのうろこビード外観重視のお客さまに向けて、EAGL工法とパルスw88 winを組み合わせた新しいw88 win工法を提供しています。新型EAGL工法によるw88 win波形制御が、従来のパルスw88 winよりも低スパッタ、かつビード幅が均一でスマット※1が少ないw88 winを可能としました。当社の新型サーボトーチは、高速応答性を実現させることにより、人手で行っているTIGw88 win※2より高速で、TIGw88 winと同等以上の低スパッタ・低スマットで高品質なうろこビードのアークw88 winを実現します。図4に本工法によりw88 winしたうろこビードの外観図を示します。
図4 うろこビード外観図
※1 スマットとは
w88 winワイヤ先端から離脱した溶滴の一部がアーク熱により蒸発し,シールド外へ飛散し,酸化,凝固することにより生成される黒色または灰黒色の微細な金属酸化物
※2 TIGw88 winとは
不活性ガスを用い、かつ非消耗式のタングステン電極を用いた火花を飛び散らかさない(スパッタ発生が少ない)ことが特長のアークw88 win工法
アークw88 winを行う生産現場では、様々な課題があります。例えば、一つのワークに、複数箇所のw88 winを行うときには、各箇所でw88 win条件が異なることがあります。特定箇所で不良などが発生する場合、作業者は、ロボットのプログラムを調べて、問題のあるw88 win位置とそのw88 win条件を特定する作業が必要となります。
また、ワークの品種ごとに各w88 win箇所のw88 win条件を管理することは品質確保のための最重要な項目ですが、お客さまの負担となっており、この解決が求められています。
これらの課題を解決するためには、w88 win作業の視える化が重要です。
アークw88 winの視える化として、YASKAWA Cockpit※3のArc Visualizerを提供しています。
Arc Visualizerは、ロボットごとやワーク品種ごと等に、w88 win作業履歴やアラーム履歴、w88 win波形等を分析できるトレーサビリティー機能を搭載しています。これにより図5に示すように稼働中の設備のロボット稼働情報、w88 win作業履歴、アラーム履歴、w88 win条件管理などが一目でわかり、保全活動報告や解析活動の支援など保全作業の迅速効率化が可能となります。
図5 Arc Visualizerによる稼働情報画面イメージ
※3 YASKAWA Cockpitとは
当社ソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」実現の構成要素の一つ。生産現場の設備や装置のデータをリアルタイムで収集・蓄積・分析することができるソフトウェア
当社では、低スパッタを実現するEAGL工法を開発し、これによる高品質、高効率なアークw88 winソリューションを提供してきました。また、アルミ材や高張力鋼鈑(ハイテン材)などの難易度の高いマルチマテリアルへの対応や、w88 win裕度の向上を目指したw88 win技術の開発にも取り組んできました。さらに、アークw88 win作業の視える化も実現しました。
これからもお客さまの視点で課題の解決に取り組み、アークw88 win工法のより一層の高性能化・利便性向上を推進します。さらに、お客さま設備の保全作業の効率化や生産性向上などへの貢献により、アークw88 winシステム全般にわたり、高品質・高生産性を実現するソリューションを提供していくことで、お客さまにより一層の価値を提供していきます。