テクニカルレポート 2023 No.7
w88club com w88工程全体の省エネ化と生産時間短縮に寄与するw88club com w88システム
~w88club com w88用途ワーク供給装置兼ポジショナMOTOFEEDER TILTの開発~

技術分野 ロボット技術
技術キーワード 自動車,自動化,省エネ,高品質化,高効率化,コストダウン,生産性向上,ロボット

2023年10月3日

背景と課題

Enewell-SOL P3A 25kW
図1 MOTOFEEDER TILT


Enewell-SOL P3A 25kW
図2 w88club com w88ロボットを搭載したMOTOFEEDER TILT

SDGs達成に向けて製造業においても省エネやカーボンニュートラルへの取組みが求められています。
自動車工場では、一般的に「w88club com w88工程」が最もエネルギー消費が大きく、主な要因はw88club com w88ブースの空調のエネルギー消費です。そのため、w88club com w88ブースの縮小化、w88club com w88時間の短縮化が求められています。中でも高い意匠性が要求される自動車バンパーなどの樹脂部品は大形かつ多面的な形状となり、このような部品のw88club com w88はロボット単体だけでは難しく、人による追加w88club com w88のためにw88club com w88ブースのエリア拡大が必要となったり、不良品の再w88club com w88で、ブース稼働時間の長時間化となったりすることが、更なるエネルギー消費増大の要因となっています。
当社は1980年代からw88club com w88ロボットの製造・販売を行っており、w88club com w88工程の省エネルギー化実現のためにワーク搬送装置兼ポジショナ(製品名:MOTOFEEDER TILT、図1)を開発し2020年に市場投入しました。本製品は、図2に示すようにw88club com w88ロボットを搭載して使用し、w88club com w88ロボットのコントローラで動作する旋回・傾動・回転軸でワークの搬出入とw88club com w88時のワーク姿勢の制御を行います。図3に示すように、傾動・回転軸動作によりロボットがw88club com w88しやすい姿勢にワークを位置決めすることで様々な効果をもたらし、w88club com w88工程の省エネを実現するとともに、不良品の減少が期待できます。

図3 w88club com w88 TILTの動作軸
図3 MOTOFEEDER TILTの動作軸

技術内容と特長

1.w88club com w88ブースの縮小による空調コストの削減

従来方式とMOTOFEEDER TILTを用いたセル方式のw88club com w88ライン
図4 従来方式とMOTOFEEDER TILTを
用いたセル方式のw88club com w88ライン


傾動・回転軸を用いたw88club com w88搬送
図5 傾動・回転軸を用いたワーク搬送

w88club com w88ブースの縮小は、空調コストの削減に大きな効果が見込まれます。MOTOFEEDER TILTのw88club com w88方式は、従来のコンベヤを用いたw88club com w88方式と比べて、w88club com w88ブース面積を縮小することができます。従来方式とMOTOFEEDER TILT方式のw88club com w88ブースサイズを図4に示します。
従来のw88club com w88工程は、ワークをコンベヤで運び、ロボットでw88club com w88する連続コンベヤ搬送方式でした。この場合、ワークが固定されているので、全てのw88club com w88面に到達できるよう複数の大型w88club com w88ロボットでw88club com w88が行われています。また、w88club com w88中にワークが移動する距離を確保したり、隣り合うワークへの塗料付着を避けたりすることが必要なので、ブースエリアを大きくとらなくてはなりません。
MOTOFEEDER TILTによるセル生産の場合、w88club com w88側には常にワークは1つとなりw88club com w88していないワークへの塗料付着を気にする必要がないので、隣り合うロボットの間隔を狭くできます。 また、ワークの姿勢を傾動・回転軸で制御するので、従来と同じワークを中型w88club com w88ロボットでw88club com w88でき、ワーク入れ替え時は傾動軸を用いてワークを内側に傾斜させながら旋回させることで、ブースの大幅な縮小を実現します。
さらに図5に示すように、w88club com w88ロボットを本体上部に搭載すれば、ロボット台数の減少により、更なるブースエリアの縮小を実現できます。
一例として2つの方式で同一ワークを同一条件(同一の速度、軌跡)でw88club com w88を行い必要なブース面積を比較したものを図6に示します。MOTOFEEDER TILTを用いることで、空調エネルギーに直結するブース面積の縮小(約35%)が可能となります。
また、一定方向に塗布することになるので、塗料ミスト抑制効果によりダウンフロー風速を下げることができ、更なる空調コスト削減にもつながります。

一工程当たりのブース面積比較
図6 一工程当たりのブース面積比較

2.大型w88club com w88ロボットから中小型w88club com w88ロボットへのサイズダウンとロボット台数削減による省エネ化

従来の連続コンベヤ搬送方式ではワーク側の姿勢は固定のため、自動車バンパーやグリルなどの大形外装部品は全てのw88club com w88面に到達できるよう複数の大型w88club com w88ロボットでw88club com w88が行われています。
図7にMOTOFEEDER TILTの上部に搭載したロボットによるw88club com w88の様子を示します。MOTOFEEDER TILTでは、ワーク側の姿勢を当社独自のロボット制御技術により傾動方向・回転方向に制御する(特許取得済)ことができるので、長いリーチの大型w88club com w88ロボットや複数台のw88club com w88ロボットが必要なくなり、中小型w88club com w88ロボット1台でも大形部品のw88club com w88が可能となり、ロボットのサイズダウンや台数削減ができ、消費電力を削減できます。

MOTOFEEDER TILTの上部に搭載したロボットによるw88club com w88
図7 MOTOFEEDER TILTの上部に搭載したロボットによるw88club com w88

3.汚れないw88club com w88によりw88club com w88不良の削減と清掃やメンテナンスなど生産準備時間の削減

MOTOFEEDER TILTを用いた場合、傾動・回転軸によりワークのw88club com w88面を常にロボット正面に配置できることで塗布方向が常に一定になり、下からの吹上げやロボット自身に向けてのw88club com w88がなくなります。これによりブース内に堆積した塗料が剥がれ落ちてワークに付着するといった不良品発生のリスクの低減や清掃作業時間の短縮につながり、生産準備にかかるブース稼働や人件費などコスト削減を実現できます。
w88club com w88による汚れを削減する設置例を図8に示します。塗布方向が一定のため、常に排気ダクトの吸気口に向けてw88club com w88を行うことができ、ロボット自身やブース内への塗料の付着を防ぎます。

w88club com w88による汚れを削減する設置例
図8 w88club com w88による汚れを削減する設置例

4.高品質w88club com w88による塗料消費、補正w88club com w88・再w88club com w88作業時間の削減

傾動軸、回転軸によってワークの姿勢を制御しながらw88club com w88を行うことで、w88club com w88ロボット単体では届きにくい部位にもw88club com w88面に面直かつきめ細やかに塗布することができ、品質が向上します。従来のワークが固定された状態でのw88club com w88姿勢を図9に示します。ロボットアームの動作だけではワークに対して面直姿勢がとれないため、塗料の届きにくい部位には多量に吹き付けることで対応します。これに対して、図10で示すように、MOTOFEEDER TILTの回転・傾動軸を用いたw88club com w88では、ワークに対して面直姿勢をとることで塗りムラ、塗料の過剰な堆積が減少し、補正w88club com w88、再w88club com w88作業の時間が減少します。これは人員、機器、エリア(特に空調)にかかるコストを削減できます。

  • ワークが固定された状態でのw88club com w88姿勢(従来の連続コンベヤ搬送方式)

    図9 ワークが固定された状態でのw88club com w88姿勢
    (従来の連続コンベヤ搬送方式)

  • 回転・傾動軸を用いたw88club com w88姿勢(MOTOFEEDER TILTを用いた方式)

    図10 回転・傾動軸を用いたw88club com w88姿勢
    (MOTOFEEDER TILTを用いた方式)

また、MOTOFEEDER TILTを用いた方式では、ロボットや各機器の設置誤差によるw88club com w88品質への影響を削減できます。従来の連続コンベヤ搬送方式とMOTOFEEDER TILTを用いた方式それぞれによる設置時のロボットとワークの位置関係を図11、図12に示します。従来方式ではロボットや各機器を個別にフロアに設置するため、設置誤差がロボットとワークの相対位置の誤差につながり、w88club com w88の品質に影響します。MOTOFEEDER TILTを用いた方式ではMOTOFEEDER TILTにロボットとワークを搭載し、ロボットとワークの位置関係に精度をもたせているので、双方の位置関係は一定になります。このため、シミュレーションと実機の精度が確保され、動作の共有が可能となり、品質確認工数が削減できます。この効果によりMOTOFEEDER TILTは設置誤差を気にする必要がなくなるので、例えば、熟練したw88club com w88技術者がいない海外拠点にも国内拠点で品質出しした動作データを共有することで現地の立上げ時間を短縮できます。

  • 従来の連続コンベヤ搬送方式でのロボットとw88club com w88の位置関係

    図11 従来の連続コンベヤ搬送方式での
    ロボットとワークの位置関係

  • MOTOFEEDER TILTを用いた方式でのロボットとw88club com w88の位置関係

    図12 MOTOFEEDER TILTを用いた方式での
    ロボットとワークの位置関係

5.待ち時間の削減による生産時間の短縮

連続コンベヤ搬送方式の場合、ロボットがw88club com w88可能な動作範囲にワークが入るまでの待ち時間やロボットの姿勢やワークとの干渉などでw88club com w88できないことによる待ち時間が発生します。
MOTOFEEDER TILTの2本のアームを用いたw88club com w88とワークの搬入出を図13に示します。MOTOFEEDER TILTの片側のアームに載せたワークをw88club com w88中に、反対側のアームにワークの搬入出が可能であり、ワークを内側に傾動させて大回転を行うことでワークの脱落を防ぎながら旋回速度を上げることができるので、ワークが入るまでの待ち時間を短縮できます。ワーク姿勢を制御できるためワークとの干渉による待ち時間もなくw88club com w88でき、これらの効果で生産時間を短縮できます。

2本のアームを用いたw88club com w88とワーク搬入出
図13 2本のアームを用いたw88club com w88とワーク搬入出

また、連続コンベヤ搬送方式の場合、コンベヤ生産の特性上、搬送されるワークの位置、搬送速度によっては干渉や特異点(ロボットが制御上動作姿勢がとれない姿勢)などの制限により、塗分けを必要とする場合がありますが、MOTOFEEDER TILTを用いた方式ではそのような制限はないため、塗分け不要な1パスによるw88club com w88ができ、塗りムラのない均一な膜厚を実現できます。
コンベヤ生産で塗分けを必要とする例を図14に示します。ワークが固定された状態ではワークの面と面の間にロボット動作姿勢の特異点が生じるため、面ごと(青い矢印と赤い矢印)に塗り分ける必要があります。MOTOFEEDER TILTを用いた1パスw88club com w88の例を図15に示します。MOTOFEEDER TILTでワークの姿勢を変えるためロボット動作姿勢の制限はなくなり、複数の面を連続動作でw88club com w88することが可能となります。

  • コンベヤ生産で塗分けを必要とする例(従来の連続コンベヤ搬送方式)

    図14 コンベヤ生産で塗分けを必要とする例
    (従来の連続コンベヤ搬送方式)

  • 塗分け不要な1パスw88club com w88(MOTOFEEDER TILTを用いた方式)

    図15 塗分け不要な1パスw88club com w88
    (MOTOFEEDER TILTを用いた方式)

適用事例

1)省エネルギー化の試算例

従来の連続コンベヤ搬送を用いた生産システムと今回提案するMOTOFEEDER TILTを用いた生産システムを自動車樹脂部品へ採用したレイアウト例(中塗り、上塗り1、上塗り2、クリアの4工程)を図16、図17に示します。また、それぞれのシステムにおけるエネルギー使用量を試算した結果を表1に示します。

連続コンベヤ搬送を用いた生産システム(従来)
図16 連続コンベヤ搬送を用いた生産システム(従来)

連続コンベヤ搬送を用いた生産システム(従来)
図17 MOTOFEEDER TILTを用いた生産システム

表1 従来システムと提案システムとの比較

項目 従来システム 提案システム 従来との比較
100個生産時間 8350s 6120s 26%短縮
(色替えは10個ごとに1回)
1個生産時間(色替えあり) 83.5s 72.0s 13.5s短縮
(w88club com w88+搬送+色替え)
1個生産時間(色替えなし) 83.5s 60.0s 23.5s短縮
(w88club com w88+搬送)
ワーク搬入出時間 15.0s 3.5s 11.5s短縮
ブース面積 90.3m2 73.3m2 18.8%削減
ブース風速 0.6m/s 0.45m/s 25%削減
ブース内給気風量 3251m3/min 1980m3/min 39%削減
100個生産時の消費電力量 1108kWh 522kWh 52%削減

生産方式の変更による「ブースの縮小」と「生産時間の短縮」、「空調の風速緩和」によりブース内への給気風量を減少できます。この効果により消費電力量は従来システムの1108kWhに対し、本システムでは522kWhとすることができ、従来比52%削減という大幅なエネルギー削減効果があります。
実際には本試算に加えてブース縮小によるイニシャルコストの低減や、セルw88club com w88によって最適軌跡が使用できることによる生産および生産準備時間の短縮、変種変量生産では連続コンベヤと異なり生産に必要のないブースの稼働を止めることによる消費電力の削減などトータルコストとしては更なる削減を見込めます。

2)高品質w88club com w88の実施例

本製品を用いることで塗着効率の向上が可能です。全幅1800mm以上ある自動車用樹脂バンパーをMOTOFEEDER TILTのワーク搭載位置に取り付け、当社中型w88club com w88ロボット(MPX2600)でw88club com w88している画像を図18、図19に示します(ワーク部は画像処理を施しています)。前記のようにバンパーのような大形かつ多面的な形状をもつ部品もワーク姿勢を制御しながらw88club com w88できるため、常に塗布面に面直かつ重力方向にw88club com w88でき、通常30~40%の塗着効率であるエアスプレーを用いて60%を越える塗着効率を実現できました。塗着効率の向上は近年価格高騰している塗料消費の抑制を実現し、未塗着の塗料回収といったメンテナンス頻度にも影響を与えるため、コスト削減、省エネルギー化に貢献します。

  • 実施例:自動車用バンパー(前面部)のw88club com w88

    図18 実施例:自動車用バンパー(前面部)のw88club com w88

  • 実施例:自動車用バンパー(側面部)のw88club com w88

    図19 実施例:自動車用バンパー(側面部)のw88club com w88

今後の展望

MOTOFEEDER TILTは、w88club com w88ブースの縮小化、w88club com w88時間削減を実現し、生産時の消費電力削減に大きく貢献できます。このことが評価され、「令和4年度 第42回優秀省エネ脱炭素機器・システム表彰」にて「日本機械工業連合会会長賞」を受賞しています。今後も社会全体が目標としているカーボンニュートラル実現に向けて、省エネルギー化を実現するものづくりを続けていきます。今後も安川電機が生み出す製品にご注目ください。

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